自動車板金塗装になるには
別名: 自動車車体整備士, 自動車板金塗装工, 板金工(自動車修理業), 板金塗装工(自動車修理業)
自動車のフレームの損傷やボディのへこみ・きずを修復し(板金作業)、修復箇所を塗装する。
仕事内容
自動車の整備は、エンジンやブレーキ等の走行関連部位に対する「分解整備」とフレームやボディに対する「車体整備」に分かれ、自動車板金塗装では後者を担う。事故車の修理や少し擦ってしまった等の軽補修がメインであり、機能及び美観を限りなく元の状態に回復させることを目的とする。また、顧客の要望に応じてさまざまなパーツを取り付けたり塗装するカスタマイズや、何十年も前の自動車を蘇らせるレストアを行うこともある。
板金作業においてフレームの損傷が見られる場合、フレーム修正機という大型の装置に載せ油圧をかけて修復する。ボディのへこみについては、ハンマーと当て板で押し叩く、スライドハンマー で引き出す等の手法により大まかな成形を行い、パテ塗り と研磨で表面をなめらかにする。作業の過程で、必要なパーツの脱着、溶接や交換を行う。
塗装作業は塗装ブース内で行う。これは、塗装面にほこりを付着させず、周囲に塗料を飛散させないためのもので乾燥機を兼ねることも多い。マスキング と下塗りの後、調色した塗料をスプレーガンで吹き付け、仕上げに表面を磨いてつやを出す。塗料の調色について、例えば自動車メーカーAと自動車メーカーBの赤色は微妙に異なっており、基本となる色データが公開されているものの、微調整には技量を要する。
事故車等の様相は千差万別であるため、1台1台の状況に応じて適切な修復方法を使い分ける必要がある。また、車体整備は美観の問題でもあり分解整備のような性能基準値が存在しないため、仕上がりの良し悪しの受止め方に個人差が生じがちな難しさがある。
上記に述べたのはいわゆる修復の本体作業であるが、顧客から車体整備工場に自動車が持ち込まれた際、最初に行うのは車体の状況の見極めである。そして、修理するか廃車にするか、修理する場合は板金でやるかパーツの交換か、カスタマイズやレストアであればその内容等について、顧客に提示し、見積もりを行い、支払い方法などについて説明する。
自動車板金塗装の仕事を行う上で大切なのは、第一に、車に乗る人の安心・安全を守ることであり、そのために道路運送車両法等の法令を遵守することである。納車の際に顧客から「きれいにしてくれてありがとう」と言われたり、何日もかかる大がかりな修復を経て見違えた車体を目にした時に達成感を感じる人が多い。
◇よく使う道具、機材、情報技術等
ハンマー、当て板、スライドハンマー、一般的な工具(ドライバー、スパナ、ペンチ、レンチ等)、フレーム修正機、ジャッキ、溶接機、パテ、ヘラ、研磨のための機械・道具(ベルトサンダー、紙やすり、コンパウンド等)、下地材、塗料、溶剤、スプレーガン、扇風機、パネルヒーター、防護マスク、手袋
主な業務
- 事故車の修理や少し擦ってしまった等の軽補修を行う。
- 顧客の要望に応じて車体のカスタマイズを行う。
- 古い車の外観や機能を復元するため、レストアを行う。
- フレーム修正機を用いてフレームを修復する。
- ボディのへこみについて、ハンマーやスライドハンマー等を用いて大まかな成形を行う。
- パテ塗りと研磨で表面をなめらかにする。
- パーツの脱着や交換を行う。
- パーツの溶接を行う。
- マスキングと下塗りを行う。
- 塗料を調色し、スプレーガンで吹き付ける。
- 塗料を乾燥させる。
- 表面を磨きつやを出して仕上げる。
- 修理の方針や内容等について、顧客の要望や保険会社の意向も聞き取りつつ専門家としての提案を行う。
- 見積書の作成や支払い等に関し、顧客や保険会社と調整・折衝する。
なるには
入職にあたって必須となる学歴や資格はない。新卒の場合、専門学校の車体整備科やオートボディ科の卒業生等が考えられるが、全体としては中途採用の比率が大きい。中途採用の場合、分解整備工場からの転職のほか、ハローワークや民間の求人情報サイト、職業訓練施設等を通じた異業種からの入職もある。「若者のクルマ離れ」もあいまってか、分解整備を含め、自動車整備業界は慢性的な人材不足の傾向にある。
入職後は指導役についてOJTで業務を習い、数年でひととおりの知識・スキルを身につけるが、美観を取り扱う業務の性格上、本人のセンスに左右される部分も大きい。その後、比較的規模の大きな事業所においては、新人の指導を任されたりマネジメントへと進むキャリアパスもある。
自動車整備に関する資格として、国土交通省所管の国家資格である「自動車整備士」があり、「1級自動車整備士」、「2級自動車整備士」、「3級自動車整備士」、「特殊整備士」に分類される。「特殊整備士」の一つである「自動車車体整備士」は、自動車板金塗装の知識・技能を証する資格であり、専門性のアピールや顧客からの信頼獲得に役立つことがある。
その他、厚生労働省の技能検定である「塗装技能士(金属塗装作業)」や、「溶接技能者(アーク溶接) 」、「溶接技能者(ガス溶接 )」、「有機溶剤作業主任者」、「危険物取扱者(乙種第4類)」等、いずれも必須ではないが関連資格は多岐にわたる。
向いているのは、几帳面で勉強熱心な人、顧客の満足度を大切に考えることができる人である。必須の要件ではないが、実態として車好きな人が多い。車に乗る人の安心・安全を守ることにこだわり、自らの仕事が日本の社会インフラの一翼を担っていることに矜持を持てる人材が求められている。
この仕事で働く人は、高卒の人が多いと答えています。 job tag がそれぞれの職業で働く人に行った調査(複数回答)によるものです。働く人の実感を示すもので、それぞれの学歴の人の割合ではありません。
就き方
- 専門学校・短大・高専・技能検定: 技能検定 job tag がこの仕事に挙げている技能士の等級:1級塗装技能士、2級塗装技能士。技能検定は職業能力開発促進法に基づく国家検定です。; 専門学校:自動車整備(工業関係) 専修学校の「自動車整備」の課程は、2024年度の卒業生が6,334人で、そのうち5,314人が関連分野に就職しました(令和7年度学校基本調査 第237表)。課程と職業の対応付けは Peernovo によるものです。
- 国家資格・免許: job tag がこの仕事の関連資格として挙げている資格です:危険物取扱者(乙種)。
- 国家資格・免許: job tag がこの仕事の関連資格として挙げている資格です:ガス溶接技能者。
- 国家資格・免許: job tag がこの仕事の関連資格として挙げている資格です:自動車車体整備士、一級小型自動車整備士、二級自動車整備士、三級自動車整備士。
- 国家資格・免許: job tag がこの仕事の関連資格として挙げている資格です:有機溶剤作業主任者。
給与 · 求人の状況 · AIとこの職業
- 平均年収:¥5,038,000 民間企業だけ(常用労働者10人以上の事業所)の数値です。公立学校の教員や警察官などの公務員は含まれません。
- 月の所定内給与(残業代と賞与を除く):中央値は¥297,000で、中間の半数の人は月¥248,500〜¥355,800です。
- 賃金構造基本統計調査の職種「自動車整備・修理従事者」の数値です
- ハローワークの有効求人倍率は4.09倍です(2025年)。 将来の予測ではなく、いまの求人の状況を示す数値です。ハローワークに登録された求人と求職者だけを数えたもので、大卒や専門職の採用の多くはハローワークを通りません。
- 国際労働機関(ILO)の世界推計によると、生成AIがこの仕事でできることは比較的少ないとされています。
労働条件の特徴
勤務先は全国各地の車体整備工場である。ディーラー系を始めとして比較的規模の大きな事業所もあるが、家族経営または従業員数名程度の小規模事業所が多数存在する。
一部、空調環境のない工場においては、暑さ寒さに悩まされることがある。また、塗装時に有機溶剤を用いるため、防護マスクの着用や定期的な特殊健康診断の受診等が必須である。重量物を運ぶ・持ち上げる際には専用の機材があるので、特に力が必要な仕事ではない。
就業者は圧倒的に男性が多いが、女性も少しずつ増加傾向にある。業界全体で高齢化が進んでおり、就業形態は正社員が大半である。賃金や労働時間、休日等は勤務先の規定による。日勤が一般的であり、長期休暇の前後や降雪後に多忙となることが多い。
従来、分解整備を行わない車体整備工場には特段の基準なく、無認証で運営することができた。しかし、レーダー、カメラ、センサー等の電子制御装置の普及に対応し安全性を確保する観点から、2020年より、電子制御装置整備をその対象に含む自動車特定整備制度が開始されている。これにより、電子制御装置整備を行おうとする車体整備工場においても、設備や工員等の基準(例えば、整備主任者の要件として「1級自動車整備士」または「2級自動車整備士や自動車車体整備士等+一定の講習」)を満たした上で認証の取得が必要となった。また、政府は、2035年までに乗用車の新車販売を全て電動車とする方針を打ち出しており、このことによっても、自動車整備のあり方は劇的な変化を迎えることとなる。
いずれにしろ、この変革期において、新技術に関する知識を吸収しなければ業務を行うことができなくなりつつあり、自ら勉強に取り組むとともに、業界団体がホームページに情報をまとめたり講習会を設ける等の動きもある。
「ぶつかりにくい車」の進化により、将来的に自動車板金塗装の需要が減少する予測もある。一方、「決してぶつからない車」は存在せず、カスタマイズ等の要望も増えていることから、自動車板金塗装の職種がなくなることはないと考えられる。
関連する職業
よくある質問
自動車板金塗装になるにはどうすればいいですか?
入職にあたって必須となる学歴や資格はない。新卒の場合、専門学校の車体整備科やオートボディ科の卒業生等が考えられるが、全体としては中途採用の比率が大きい。中途採用の場合、分解整備工場からの転職のほか、ハローワークや民間の求人情報サイト、職業訓練施設等を通じた異業種からの入職もある。「若者のクルマ離れ」もあいまってか、分解整備を含め、自動車整備業界は慢性的な人材不足の傾向にある。
日本での自動車板金塗装の収入はどのくらいですか?
民間企業での平均年収は、賞与を含めて¥5,038,000です(厚生労働省)。 この数値は、いくつかの職業を含む賃金構造基本統計調査の職種「自動車整備・修理従事者」のものです。
自動車板金塗装になるには学位が必要ですか?
通常は必要ありません。この職業が属する国勢調査の職業分類で大卒以上の人は7%にとどまります。主な就き方:技能検定、専門学校:自動車整備(工業関係)。
AIによって自動車板金塗装の仕事は変わりますか?
国際労働機関(ILO)の世界推計によると、生成AIがこの仕事でできることは比較的少ないとされています。
出典
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」、政府標準利用規約(第2.0版)、2026年10月4日取得
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」令和7年、政府標準利用規約(第2.0版)、2026年10月4日取得
- 総務省統計局「令和2年国勢調査」抽出詳細集計、政府標準利用規約(第2.0版)、2026年10月4日取得
- 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)職業情報データベース ダウンロードデータ(解説系 ver.7.01、簡易版数値系 ver.7.00)、職業情報提供サイト(job tag)、2026年10月4日取得
- International Labour Organization, Generative AI and Jobs: A Refined Global Index of Occupational Exposure (ILO Working Paper 140, Gmyrek et al.)(ILO Working Paper 140, May 2025, Annex Table A1)、CC BY 4.0、2026年10月4日取得
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)作成 職業情報データベース 解説系ダウンロードデータ(IPD_DL_description_7_01.xlsx)ver.7.01 職業情報提供サイト(job tag)より2026年10月4日にダウンロード(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/download)を加工して作成
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)作成 職業情報データベース 簡易版数値系ダウンロードデータ(IPD_DL_numeric_7_00.xlsx)ver.7.00 職業情報提供サイト(job tag)より2026年10月4日にダウンロード(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/download)を加工して作成
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」を加工して作成
出典:総務省統計局「令和2年国勢調査」を加工して作成
出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査」を加工して作成
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」を加工して作成
出典:総務省「日本標準職業分類(平成21年12月告示)」
2026年10月4日更新
