作業環境測定士になるには
有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場において、有害物質(化学物質、粉じんなど)の濃度を測定し、その結果をもとに労働者の健康障害を予防するため、職場環境の評価と改善提案を行う。
仕事内容
労働者の健康保持に貢献する専門家として、工場など有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場において、有害物質(有機溶剤、粉じんなど)の濃度を測定し、その結果をもとに労働者の健康障害を予防するため、職場環境の評価と改善提案を行う。
労働安全衛生法により、事業者には一定の有害な業務を行う屋内作業場等で必要な作業環境測定を行い、その結果を記録することが義務づけられている。さらに、有機溶剤、特定化学物質、粉じん等を取り扱う屋内作業場の作業環境測定は作業環境測定士による実施が作業環境測定法により義務付けられている。その他にも、作業環境測定士による実施は義務付けられていないが、事業者に義務化されている熱中症対策への対応として、WBGT値(暑さ指数)の測定、記録、測定結果に基づくリスク評価等も行う場合がある。また、作業環境測定士は第一種作業環境測定士と第二種作業環境測定士に大別され、前者はデザイン、サンプリング、分析(※1)の全ての業務を行うことができる。後者はデザイン、サンプリング、簡易測定器による分析業務のみ行うことができる。
作業環境測定の業務の大まかな流れは、デザイン(測定計画の立案)、サンプリング(試料採取)、採取した試料の分析、評価と報告書の作成、改善提案となる。それぞれの業務に求められる知識とスキルは以下のとおりであり、労働安全衛生法や作業環境測定法を土台として、粉じん、化学物質などの有害因子の種類と特性に関する広範な知識が必要となるとともに、測定を行うに当たっては、各種測定機器を取り扱うことができることは勿論のこと、採取した試料を様々な分析装置にかける際には、想定される対象物質に応じて装置の校正ができること等、専門的なスキルが必要となる。
デザイン(測定計画の立案)の段階では、測定する対象となる作業場の範囲の特定、測定点でどのような方法により測定するか等を計画する。その際、例えば、工場等で取り扱っている化学物質等の種類、当該物質等を扱っている作業実態等を事前によく把握しておくことが不可欠である。想定される物質によって試料の採取方法や測定機材、機器が異なる。
サンプリング(試料採取)の段階では、現地に複数名によるチームで赴き、定常作業が行われている現場で測定を行う。これは、労働者が通常実施しているいつも通りの作業環境下で空気を採取しないと、疾病を予防するための正しい評価ができないからである。ガス濃度の測定の場合、その場で簡易測定器により測定、または捕集器具に吸着させたり、直接、空気を専用の袋に入れて捕集し、現地から持ち帰る。6ヶ月に1回の法定測定でみると、小規模の事業所では午前中あるいは午後に測定し試料採取は終わるが、大規模の事業所では1週間近く要することもある。
分析の段階では、採取した試料を物質に応じて分析機器を用い、測定点ごとの化学物質等の濃度を算出する。
評価と報告、改善提案の段階では、分析結果に基づいて、作業環境が労働者の健康を害するレベルにないかどうかを評価し、報告書を作成する。測定結果から作業環境を3つの管理区分(「現状維持」、「改善を要する」、「早急な改善を要する」)のうちどの区分に該当するか評価し、改善が必要な場合は、事業者に具体的な改善策を提案し、安全で健康的な作業環境の維持に向けた働きかけをする。
作業環境測定は一度実施すれば、それで終了というものではない。法定の定期的な測定や、改善策を提案した事業所については、再度の測定、改善策がしっかり実施されているかの確認を行う必要があることから、測定した企業や現場とは何年間にも亘る関係性を持つことになる。
作業環境測定機関(作業環境測定を専門とする企業等)の中には、作業環境測定以外にも、改善施工部門を持ち、改善提案の具体策として、例えば、局所排気装置などの設置を併せて行う場合がある。そのような場合は、導入した装置のメンテナンスをしながら、環境が改善されているか状況を見届けることになる。
また、測定の依頼がある企業の安全衛生意識の高まりを背景に、これまでの「法律で決まっているから測定を依頼する」というものから「労働者の健康確保の観点からどのような改善策があるか」というように、積極的な提案を求められる場面が増えている。
測定結果の報告、評価、改善提案といった場面において、健康障害防止、労働安全衛生に対する意識の高まりを背景として、企業が積極的に作業環境の改善提案を受け入れ、その効果が認められることにやりがいを感じる作業環境測定士が多く見られる。
(※1)分析については、「放射性物質」、「鉱物性粉じん」、「特定化学物質」、「金属類」、「有機溶剤」の5つの区分に分かれており、登録を受けた区分に応じて分析できる化学物質等の種類が異なる。
<就業希望者へのメッセージ>
今後も労働安全衛生に関する企業の責務は大きくなっていきます。病気を未然に防ぐという広い意味で“予防医学”に携わっているという自負があります。(就業者 50代)
報告書は測定士の個人名で作成するので責任感が大きいです。自分の改善提案内容が、次回の測定で実行され結果が改善されていると、やりがいと手応えを感じます。(就業者 50代)
◇よく使う道具、機材、情報技術等
空気をサンプリングするポンプ及び物質に応じた試料採取機器、各種分析装置(分光光度計、ガスクロマトグラフ、ICP-MSなど)、検知管、デジタル粉じん計、保護具(防毒マスク、防じんマスク、保護めがね、化学防護手袋、耳栓、安全靴)、化学防護衣、長袖の作業着
なるには
作業環境測定士として作業環境測定を行うには、第一種又は第二種作業環境測定士試験に合格し、都道府県労働局長の登録を受けた講習機関が実施する講習を修了した上で、(公財)労働安全衛生技術試験協会に作業環境測定士として登録を受ける必要がある。作業環境測定士は化学物質等を取り扱う企業に所属する場合と作業環境測定機関(作業環境測定を専門とする企業等)に所属する場合があるが、活動している作業環境測定士の多くは作業環境測定機関に所属している。新規学卒者の場合、作業環境測定機関に入社する時点で資格を取得している者はほとんどおらず、入社後、実際の測定に同行し、先輩社員の指導を受けながら、資格取得に備えることが一般的である。
新規学卒の場合、理系の大卒や大学院卒が多いが、高卒で入社する者もいる。また、中途採用者が一定数おり、多様なバックグラウンドから作業環境測定士になっている。国家試験には第一種と第二種の資格があり、既述の通り、現場で行うことができる作業環境測定の業務範囲に違いがある。多くの場合、第二種の資格を取得し、実務の経験を重ねながら、第一種の資格取得を目指すこととなる。なお、関連資格として、環境計量士、労働衛生コンサルタント等の資格を取得する者もいる。
一般的には、5~10年ほど現場での測定実務を重ね、また、出向いた先とのコミュニケーション等関係性の取り方などを学びながら作業環境測定機関のリーダーや管理職となる。また、製造業等の企業に属しながら工場等で作業環境測定士となり、企業の中で管理職として働くようになることが多い。
求められる能力としては、「デザイン(測定計画の立案)」では、企画をわかりやすく伝える能力、「評価」では、分析結果から適切な評価を行い、それをわかりやすく報告する能力及び改善提案の能力が挙げられる。「サンプリング」では、現場責任者とのやりとりなど、単に現場で作業環境を測定するだけでなく、コミュニケーション能力が問われる。
また、工場等が立地する地域における産業の特色により、取り扱う物質も大きく異なることから、物質に応じた専門知識、スキルを磨く必要がある。
就き方
- 大学: 工学の学位, 日本の95校の大学で開講
- 国家資格・免許: job tag がこの仕事の関連資格として挙げている資格です:第一種作業環境測定士、第二種作業環境測定士。この仕事に就くには必要です(job tag の「就くには」をもとに Peernovo が判断)。
給与 · 求人の状況 · AIとこの職業
- 平均年収:¥6,119,400 民間企業だけ(常用労働者10人以上の事業所)の数値です。公立学校の教員や警察官などの公務員は含まれません。
- 月の所定内給与(残業代と賞与を除く):中央値は¥335,600で、中間の半数の人は月¥267,400〜¥433,700です。
- 賃金構造基本統計調査の職種「他に分類されない技術者」の数値です
- ハローワークの有効求人倍率は5.57倍です(2025年)。 将来の予測ではなく、いまの求人の状況を示す数値です。ハローワークに登録された求人と求職者だけを数えたもので、大卒や専門職の採用の多くはハローワークを通りません。
- 国際労働機関(ILO)の世界推計によると、生成AIがこの仕事でできることは比較的少ないとされています。
労働条件の特徴
賃金、労働時間、労働条件、就業環境は勤務先の規定による。資格手当が出る職場もある。年間を通じて、作業環境測定のスケジュール(先方との日程調整)は立てやすいが、依頼主の希望によってはまれに通常勤務時間外に勤務することもある。
作業環境測定士として活動するのは、労働安全衛生法で定められた有害業務を行う現場となり、業種としては製造業の現場が多い。例を挙げると、有機溶剤等を取り扱う工場、放射性物質を取り扱う施設、高温・低温となる現場、極端な騒音が発生する工場などである。
近年は、労働者の健康確保など、企業の労働安全衛生に対する意識と関心は高まりをみせている。労働者が健康で安全に働けるよう、職場の健康管理をより積極的に行い、健康と生産性の両立、企業と労働者双方にとってより良い関係の構築のためにも、作業環境測定士が果たす役割がますます大きくなっている。
なお、令和7年の労働安全衛生法の改正(※2)により、個人ばく露測定が作業環境測定の一つとして位置づけられたことから、作業環境測定士の活躍の場が広がることとなる。
(※2)令和7年5月に公布された労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)により、継続して金属アーク溶接等作業を行う屋内作業場等において義務付けられている他、リスクアセスメントにおいてリスク見積もりの一環で実施する個人ばく露測定が作業環境測定の一つとして位置づけられ、追加の講習を修了した作業環境測定士等による実施が義務付けられた(令和8年10月1日施行)。
関連する職業
よくある質問
作業環境測定士になるにはどうすればいいですか?
作業環境測定士として作業環境測定を行うには、第一種又は第二種作業環境測定士試験に合格し、都道府県労働局長の登録を受けた講習機関が実施する講習を修了した上で、(公財)労働安全衛生技術試験協会に作業環境測定士として登録を受ける必要がある。作業環境測定士は化学物質等を取り扱う企業に所属する場合と作業環境測定機関(作業環境測定を専門とする企業等)に所属する場合があるが、活動している作業環境測定士の多くは作業環境測定機関に所属している。新規学卒者の場合、作業環境測定機関に入社する時点で資格を取得している者はほとんどおらず、入社後、実際の測定に同行し、先輩社員の指導を受けながら、資格取得に備えることが一般的である。
日本での作業環境測定士の収入はどのくらいですか?
民間企業での平均年収は、賞与を含めて¥6,119,400です(厚生労働省)。 この数値は、いくつかの職業を含む賃金構造基本統計調査の職種「他に分類されない技術者」のものです。
作業環境測定士になるには学位が必要ですか?
多くの場合は必要です。この職業が属する国勢調査の職業分類では、働く人の62%が大卒以上です。
AIによって作業環境測定士の仕事は変わりますか?
国際労働機関(ILO)の世界推計によると、生成AIがこの仕事でできることは比較的少ないとされています。
出典
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」、政府標準利用規約(第2.0版)、2026年10月4日取得
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」令和7年、政府標準利用規約(第2.0版)、2026年10月4日取得
- 総務省統計局「令和2年国勢調査」抽出詳細集計、政府標準利用規約(第2.0版)、2026年10月4日取得
- 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)職業情報データベース ダウンロードデータ(解説系 ver.7.01、簡易版数値系 ver.7.00)、職業情報提供サイト(job tag)、2026年10月4日取得
- International Labour Organization, Generative AI and Jobs: A Refined Global Index of Occupational Exposure (ILO Working Paper 140, Gmyrek et al.)(ILO Working Paper 140, May 2025, Annex Table A1)、CC BY 4.0、2026年10月4日取得
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)作成 職業情報データベース 解説系ダウンロードデータ(IPD_DL_description_7_01.xlsx)ver.7.01 職業情報提供サイト(job tag)より2026年10月4日にダウンロード(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/download)を加工して作成
独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)作成 職業情報データベース 簡易版数値系ダウンロードデータ(IPD_DL_numeric_7_00.xlsx)ver.7.00 職業情報提供サイト(job tag)より2026年10月4日にダウンロード(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/download)を加工して作成
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」を加工して作成
出典:総務省統計局「令和2年国勢調査」を加工して作成
出典:文部科学省「令和7年度学校基本調査」を加工して作成
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」を加工して作成
出典:総務省「日本標準職業分類(平成21年12月告示)」
2026年10月4日更新
